2016年6月25日土曜日

ガレノス『ティマイオス敷衍』(6)

VI―それから彼は言った:「至高なる神は天使たちに汎く言われた:「彼らは生成されたものなので、消滅しないことはない。しかしながら、彼らはいかなる時にも、神の意志や配慮によっても消滅しないだろう。なぜなら天使たちを、世界において死を受け入れる動物が生成するための原因としなければならなかったのだから。というのも、もし創造主が彼らの創造を指揮したら、彼らは天使たちの等級になっていただろうから。」」(41a–c)それから彼は言った:「創造主(至高なる神に讃えあれ)は天使たちに、不死の天性の始まりを与えた(それで理性的魂を意味しているのは明らかである)。そしてこのため、世界の魂が混ぜ合わされている第一の混淆を混淆したとき、前回のものの残りを注ぎこみ、それらをすべて混ぜ合わせ、それらをある面ではそのまま存続するものとして作ったのだ。しかし創造主はそれらをその似像(al-mithāl)のように消滅しないものとして作ったのではなく、第二のもの、第三のものとして作ったのだ。」(41d)
それから彼は言った:「世界の創造が完了すると、創造主は魂を星々の数と同じになるよう分割し、各々の魂をそれぞれの星のうちに置き、魂たちに世界の本性を示し、規範(al-sunan)を定め、魂たちに布告した。」(41d–e)それから彼は言った:「すべての人々にとって最初の生成はひとつで、その持ち主から生成が〈まったく〉不足していない。」(41e)それから彼は言った:「しかし――魂が各々に、各々に相応しい時間の道具に応じて植えつけられたとき――創造主(至高なる神に讃えあれ)は動物のなかで創造主にとって最も優れたものを発芽させなければならなかった。また人間の本性は二種類なので〈…〉そのうち優れた方は、後に男と呼ばれるものである。」(41e–42a)
それから彼は言った:「人間は魂が肉体と結び付けられたあとに、その肉体に出たり入ったりするものを必要とするので、創造主(至高なる神に讃えあれ)はそのうちに生得的な感覚を作り、そのうちに快楽と苦痛が混ぜ合わされた欲望(al-shahwah)を作り、それに加えて恐怖と怒りや、これらに従属するものや、それらに反対のものを作った。人間がそれらを打ち負かしたとき、彼の生命と統括は正義に従っている。逆にこれらのものが人間を制圧したとき、彼の生命と統括は不正に従っている。すべての時間を首尾よく過ごして人生に満足している者は、その魂もそれが出発してきた星々に戻り、彼の生命をより優れて統括することでそこに安住する。しかし彼の生命をそのように[統括]せず、その統括をしくじった者は、第二の生成において女の本性に生まれ変わる。さらにこの本性を維持しなければ、その生成の状態に対応したほかの本性で罰せられ、何らかの野獣の本性に生まれ変わり、これらの生まれ変わりは、彼が最初に立ち帰り、その魂から、自らのうちでつねに同じ状態に留まっている運動によって、彼のうちで理性(al-nuṭq)なく無秩序に混ぜられ火と水と空気と土から成るそれら反芻するものどもを断ち切って、理性でそれらを圧倒し制圧し、それによってもっとも優れていた最初の状態に戻らない限り、決して止むことがない。」(42a–42d)
それから彼は言った:「すべての魂のうちに公正を通したとき(魂たちに定めた律法(al-nawāmīs)とは異なるが)、創造主は魂たちの一部を時間の道具の一部のうちに植え、――ある魂は大地へと移された、管見によればそれは間違いだが――ほかの一部をべつの時間の道具のうちに植えた。」(41d)

(5) (7)

*底本はKrausとWalzerの校訂版。
あくまでも私訳のため、その点をご了承願います。逐語訳よりも、日本語としての読みやすさを優先してあります。また、随時更新する可能性有り。

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